LTV とは Life Time Value(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)のことで、企業のマーケティング活動の効果を評価し、将来的な収益を予測する重要な指標です。
本記事では、LTV の基本的な定義から、業種や目的に応じた計算方法、さらに LTV を向上させる具体的な施策、業界別の成功事例をご紹介いたします。

目次

 

LTV とは? 顧客生涯価値の意味

LTV (Life Time Value:ライフタイムバリュー)とは、ひとりの顧客が商品・サービスの購入をすることで、一生のうちに企業にもたらす価値(利益)の総額を指します。日本語では顧客生涯価値と呼ばれ、主にリピート購入の多い商材やサブスクモデルで活用される指標です。

Life time value:ライフタイムバリュー

LTV を高めることは即ち、商品・サービスを中長期的に利用し続けてもらうことで、企業にとっては持続可能なビジネスを成長させてゆく鍵といえるでしょう。LTV を把握し、向上させるためには、マーケティングやカスタマーサポートの部署が一体となって取り組む必要があるのです。

顧客生涯価値( CLV、CLTV )はほぼ同じ意味

CLTV や CLV(どちらもCustomer Lifetime Valueの略)は、LTV とほぼ同義で使われる言葉です。一部では、より詳細な分析の粒度によって使い分ける企業もありますが、多くの企業が LTV を含めたいずれか 1 つの名称を好んで使っています。

不動産業界の LTV(ローントゥバリュー)とは違うもの

不動産業界でも「 LTV 」という言葉が使われますが、これは「 Loan to Value(ローン・トゥ・バリュー)」の略で、不動産投資の安全性や借入の可否を判断する際の重要な指標の一つです。具体的には、物件の評価額に対する借入金の割合を指し、借入金の値が高いほど投資リスクが高いとされています。本記事で扱う LTV とは意味が異なることを、ここで紹介しておきます。

 

LTV 分析が求められる背景 4 つの課題

LTV 分析が企業にとって重要である背景には、次の 4 つの課題が挙げられます。社会や市場、顧客のニーズといった多くの変化に対応するために、LTV を分析し、将来的な収益性を把握することが不可欠なのです。

1.新規獲得、新規市場開拓の難しさ
現代の市場は競合も多く、飽和状態にあります。また少子高齢化によって、日本国内で新規顧客を獲得することは容易ではありません。

2.ビジネスモデルの変化
広告で新規顧客を集め、商品を売ってはまた集めるという「売り切り型」のビジネスモデルから、必要に応じて定額・定期払いをする「サブスクリプション型」サービスへの移行が進んでいます。

3. 顧客体験のカスタマイズ
顧客一人ひとりに合わせた「 One to One マーケティング」が求められる今、LTV はパーソナライズ戦略の方向性を判断する材料にもなります。

4.顧客ロイヤルティの向上
単なる購入だけでなく、ブランドへの愛着や信頼を高めるためには、顧客体験( CX )全体を見直し、LTV の向上につなげていく必要があります。

 

商材・目的別  LTV の計算方法

LTV の計算方法は、商材や目的によって計算式は異なりますが、基本的な考え方、指標は共通です。見慣れない用語もあるかと思いますので、それらについても触れながら進めていきます。

LTV 算出、向上のために知っておきたい重要指標

下記は、LTV を語るときに外せない指標です。どのようなものかを知っておくと、LTV を理解したり、社内へ説明したりするのに役立ちます。

  • ARPA(Average Revenue Per Account アベレージ・レベニュー・パー・コスト:アカウント単位の平均売上)
  • ARPU(Average Revenue Per User アベレージ・レベニュー・パー・ユーザー:ユーザー 1 人あたりの平均売上)
  • CAC(Customer Acquisition Cost カスタマー・アクイジション・コスト:顧客獲得単価)
  • ユニットエコノミクス(Unit Economics:サブスクリプション型ビジネスの事業指標で、顧客 1 人あたりの収益性とコストのバランスを表す)
  • チャーンレート(Churn Rate:解約率)
  • MQL(Marketing Qualified Lead:マーケティング的に有望な「認知」「興味関心」段階の見込み顧客)
  • SQL(Sales Qualified Lead:営業的に有望な「意思決定」「購入」段階の見込み顧客)

基本の LTV 計算式 EC、サブスク、定期購入サービス商材

LTV  = 平均購入単価 × 購入頻度 × 継続期間

売上の総額を求める、最も基本的な計算式です。どのビジネスモデルでも使いやすく、シンプルな構造が特徴です。

利益貢献度をKPIとしている場合の LTV計算式

LTV  = 平均購入単価 × 粗利率 × 購入頻度 × 継続期間

利益率を加味した LTV を算出する計算式です。収益性の評価をしたいときに適しています。

マーケティング、広告投資最適化をはかる 計算式

LTV  = 平均購入単価 × 粗利率 × 購入頻度 × 継続期間 − CAC(顧客獲得コスト)

利益貢献度を評価する式から、広告・マーケティングにかかったコストを引きます。投資の回収可能性や ROI(Return on Investmentの略で投資利益率)を測るために用いる計算式です。

サブスクリプションサービスの LTV 計算式

LTV  = 平均購入単価 ÷ チャーンレート(解約率)

顧客維持を重視するサブスクリプション型ビジネスは、重要な指標である解約率を使って、LTV を求めます。解約率が低ければ、LTV の値が高くなります。

その他、目的やサービスに合わせて

ユニットエコノミクス =  LTV  ÷  CAC

ユニットエコノミクスとは、事業の経済性を測る指標で、主にサブスクリプション型ビジネスで利用されます。 LTV(顧客障害価値)を CAC(顧客獲得コスト)で割って、顧客 1 人あたりの収益性とコストのバランスから、事業の健全性や成長可能性を評価するのです。
LTV が高く、CACが低いほど、ユニットエコノミクスは高く、事業は健全な状態と判断されます。

 

LTV を上げるためには 打ち手と戦略

LTV を向上させるには、上記で紹介した計算式の項目のうち「平均購入単価」「粗利率」「購入頻度」「継続期間」のいずれかを高めることです。

平均購入単価を上げる

アップセル(上位商品の提案)やクロスセル(関連商品の提案)によって、1 回あたりの購入単価を上げる施策が有効です。同じ属性のユーザーの購買履歴を分析したり、同時購入率の高い商品をおすすめしてみましょう。

利益率を上げる、コストを下げる

利益率の改善や広告のコストなど、 CAC(顧客獲得単価)の低減により、LTV を底上げすることができます。ロイヤルカスタマーからのご紹介や口コミなどに注力することは、広告費用を抑えながら、新規顧客を獲得するのに有効です。

契約期間を延ばす、解約率を下げる

顧客サポートやオンボーディング体験の強化により、チャーンレート(解約率)を下げ、継続期間を延ばすことが可能です。月額払いではなく、年払いのお得なプランを作ったり、一定期間利用が停滞しているユーザーに新機能をお知らせしながら、再利用を促すなどの施策も効果的です。

顧客体験( CX )を最大化し LTV の高い顧客を創出

MQL ・ SQL を適切に管理し、顧客のフェーズごとに適したコミュニケーションを取ることで、高 LTV の顧客を創出できます。例えば、料金表にアクセスした SQL に対して、個別相談会や説明会への参加、期間限定の無料体験を提示することで、購買意欲を高めることができます。

ツールと AI を活用して、改善スピードを上げる

施策の検討段階ではデータを取得や分析が欠かせませんが、実行フェーズも含めて、ツールや AI を導入すれば、顧客分析から改善 PDCA のスピードを向上させることができます。

Genesys Cloud CX をぜひ、ご検討ください。
https://www.genesys.com/ja-jp/genesys-cloud

 

LTV 改善の 1st ステップ 顧客との接点コンタクトセンターの見直し

LTV 改善の第一歩は、顧客ひとりひとりの状態を知り、施策を検討することです。そのためには、自社の顧客コンタクトセンターがどのようなデータを持っているのかを把握することからはじめましょう。

適切なサポートを適切なタイミングで

顧客の購買行動や Web の閲覧履歴に合わせて、必要なときに必要な情報を提供することは、顧客満足度を高め、LTV の向上にもつながります。コンタクトセンターの応対者が、自然とクロスセルやアップセルを行っているケースもあります。
なぜコンタクトセンターと接点を持ったのか、どのようにして解決をしたのかといった視点でデータを見ることが、LTV 改善のヒントになるでしょう。

働く人たちの環境を改善しながらコストの削減

従業員満足度の向上は、対応品質の向上だけでなく、離職率の低下によって新規採用や教育の人件費削減にも繋がります。また応対品質の向上が、顧客満足度につながり、ひいては LTV 向上にも寄与するという好循環も生まれるのです。

データと AI の活用で顧客の理解を高め、予測の精度を上げる

コンタクトセンターに集まる顧客の行動を分析すれば、今後を予測し、先回りした対応を行うことができます。それにより解約リスクを減らしたり、アップセルやクロスセルで顧客との関係性がより良好なものとなれば、LTV も改善していくでしょう。
そのためには、顧客の欲しいデータを取得できるシステムであるかも重要です。

 

業界別、LTV の改善事例

【金融・銀行】NPS の改善とインフラコストの削減

Westpac ニュージーランド

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Westpac ニュージーランドは、Genesys への移行により 39 拠点のコンタクトセンターを統合し、電話フローが倍増。顧客体験と NPS が向上し、インフラコストも削減されました。これにより対応品質と効率が向上し、顧客満足・継続率が改善。結果として LTV (顧客生涯価値)の最大化につながっています。

https://www.genesys.com/ja-jp/customer-stories/westpac_nz

【保険】 コールの 80 %に 30 秒以内に応答

Aioi Nissay Dowa Insurance Australia(ADICA)

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ADICA は Genesys Cloud への移行により、オムニチャネル対応と業務効率の向上を実現。コール放棄率が 75 %減、コールの 80 %に 30 秒以内に応答が可能となるなどサービスレベルが向上し、顧客満足度と NPS が改善。オペレーターの生産性向上と職務間の最適配置によりコストも削減され、災害時やリモート勤務にも柔軟に対応可能に。コールセンターの改善は LTV 向上に貢献していると推測されます。

https://www.genesys.com/ja-jp/customer-stories/aioi-nissay-dowa-insurance

こちらの eBook をダウンロードして、リテール銀行や信用組合などの 5 行のグローバルな金融サービス業が Genesys を活用して顧客満足度とロイヤルティーを高め、生産性を向上させ、サービスコストを削減している方法をご確認ください。

銀行業界における優れた CX の 5 つの事例

【流通・小売】 「サービス方程式」で CX の最大化

アスクル株式会社

アスクルはコンタクトセンターを Genesys Cloud へ移行し、在宅化・オムニチャネル対応・ Salesforce 連携などを実現。最新技術への自動対応やレポート機能の強化により CX を向上させました。自社理念「+1 マインド(基本をしっかり維持し、そこに何か 1 つ加えれば、お客様の大きな信頼を得られる)」に基づくサービス強化が顧客満足を促し、信頼関係の深化による継続購入を促進しています。

https://www.genesys.com/ja-jp/customer-stories/askul

こちらの eBook では、Genesys Cloud を活用することで業界の課題をチャンスに変えている大手小売企業の 5 つの事例をご紹介します。ぜひご活用ください。

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小売企業がロイヤルティーと効率を高める 5 つの方法

【グローバル】顧客と生涯にわたり良好な関係を築く

キャセイパシフィック航空

キャセイパシフィック航空は、Genesys Cloud を導入し、Google Cloud Dialogflow を使用した音声ボットを統合。複数チャネルを統合した CX 基盤を構築。オペレーター生産性 89 %向上、コスト 37 %削減、デジタル接点 16 ポイント増により、応対効率と顧客満足が向上。一貫したエクスペリエンスとパーソナライズ対応で長期的な信頼関係を育み、LTV 向上に貢献しています。

https://www.genesys.com/ja-jp/customer-stories/cathay-pacific

こちらのレポートは、デジタルトランスフォーメーション( DX )、パーソナライゼーションの拡大、顧客ロイヤルティの強化など、本レポートの調査結果は貴社の戦略と投資の指針となります。合わせてお読みください。

カスタマーエクスペリエンスの現状に関するレポート  ~アジア太平洋地域の主な調査結果

 

AI を活用し、新たなビジネスの創出を

LTV の改善は、顧客体験の最大化だけでなく、データに基づく新しいビジネスモデルの構築のきっかけにもなります。そのためには、顧客接点で収集するデータが非常に重要な役割を果たします。
全世界のカスタマーサポートセンターで採用されている、AI 搭載のコールセンターシステム Genesys Cloud を活用すれば、顧客理解と対応の高度化が進み、持続可能な成長が実現できます。LTV 改善を CX の観点から進めてみませんか?

参考:AI 時代のカスタマーエクスペリエンス
https://www.genesys.com/ja-jp/resources/customer-experience-in-the-age-of-ai