サブスクリプションや SaaS モデルの普及に伴い、「顧客との関係」は製品やサービスを売ったら終わりではなく、フェーズごとの課題に寄り添い、企業の発展に貢献していく時代を迎えています。
その中で企業成長のカギを握る存在として注目されているのが、「カスタマーサクセス( CS )」です。
かつて CS といえば、「カスタマーサポート(顧客の支援)」を意味することが主流でした。しかし、近年では顧客ごとに最適な支援を行い、企業の考える「成功」へと導くために伴走する「カスタマーサクセス」がそれに変わりつつあるのです。
本記事では、カスタマーサクセスとは?、カスタマーサポートや営業との違い、必要な人材とスキル、社内の仕組みの作り方や活用事例をわかりやすくまとめました。

目次

 

カスタマーサクセス( CS )とは何か?

カスタマーサクセスは、単なるサポートを超えて企業固有の目標達成に貢献していく取り組みです。企業の抱える課題は規模や成長フェーズによって変化し、多岐にわたります。
だからこそ、 1 つの課題に 1 つのツールを当てはめるのではなく、課題に寄り添い、優先順位をつけながら最適な解決策で企業をより良い状態へと導くのです。

カスタマーサクセスの定義・意味

前述の通り、カスタマーサクセスとは製品・サービスの提供を通じて企業固有の課題を解決し、その目標達成に貢献していくことです。受け身で課題に対処していくサポートと違い、能動的かつ継続的に支援をしていくという特長があります。
尚、この概念は 2000 年頃に米国企業・ Salesforce 社が提唱したといわれています。

なぜカスタマーサクセスが注目されているのか?

カスタマーサクセスが注目される背景には、 SaaS ビジネスの隆盛があります。
従来の「購入して所有する」ビジネスモデルから、 SaaS 型の「継続的に利用し、活用していく」ビジネスモデルへの変化に伴い、企業は機能や価格だけでなく、体験価値で差別化する必要性が高まったのです。
つまり、顧客が契約を続ける理由は「製品の機能」だけではなく、「利用で課題を解決し、成果を感じられること」です。その成果を確実に届けるためにカスタマーサクセスが誕生し、顧客からも求められるようになりました。

 

その仕事内容とは?カスタマーサポートや営業とどう違う?

カスタマーサクセスの仕事内容

カスタマーサクセスの理解が深まったところで、ここからは具体的な仕事内容を解説します。カスタマーサクセス部門を持たない会社にお勤めの方にとっては、「営業やコンサルとの違いは?」という疑問もお持ちの方もいらっしゃるので、似た職種との違いにも触れておきます。

カスタマーサクセスの仕事内容

カスタマーサクセスの仕事は、顧客が自社サービスを最大限に活用し、目標を達成できるよう能動的に支援することです。担当者のタスクは、導入時のオンボーディング支援から始まり、継続利用支援、利用状況のモニタリングを行いながら、課題をヒアリングします。
これらのタスクはいずれも、顧客満足度や契約継続率を高めるという共通の目標に向けて行われるため、課題解決に繋がる事例共有や、活用支援セミナー等も行うこともあります。
また、顧客から得られた情報を社内にフィードバックし、新規開発や機能強化に貢献したり、営業のアップセル提案に役立てたりすることも大切な役割です。

営業との違い

営業部門は、新規契約や取引拡大(アップセルやグループ会社への横展開)で、売上を作ることが本業です。そのため新規顧客との契約が決まったら、セールス時に得た情報を速やかにカスタマーサクセスに引き継ぎ、導入以降のタスクを任せます。以降は連携をとりながら契約更新や取引拡大時に再び、関わるのが一般的です。
営業では短期の成果が重視されますが、カスタマーサクセスでは長期の成果が重視される点も異なります。

ビジネスコンサルティングとの違い

ビジネスコンサルティングは、顧客の経営課題の分析を起点に、戦略立案から業務改善、提案・実行支援まで幅広く関わります。その目的は、売上増やコスト削減、さらには組織改革など、企業全体の成長と効率化を実現することにあります。
一方、カスタマーサクセスはより自社の製品・サービスの活用を通じて顧客の成功を支援する役割であり、業務範囲が限定されます。
ただし、長期的な信頼関係の構築に重点を置くという共通点もあります。

カスタマーサポート( CS )との違い

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに受動的に対応する業務でしたが、カスタマーサクセスは能動的に関わり、ときには課題を未然に防ぎます。近年ではサポート部門も先回り型(プロアクティブ)へと進化しつつあり、「カスタマーサクセスサポート」という新しい形も生まれています。

【関連リンク】

 AI を活用!顧客のニーズを汲み取って応える、プロアクティブなサービスへ

https://www.genesys.com/ja-jp/blog/post/proactive-service-using-ai-to-anticipate-customer-needs

 

カスタマー サクセスに向いているのはどんな人?必要なスキルは?

カスタマーサクセスを推進するうえで、人材は重要な要素です。とはいえ、特別な資質を持つ人だけが活躍できるわけではありません。求められるスキルや考え方を理解し、仕組み化することで、誰でも一定水準以上のサポートを提供できます。

顧客を成功へと導くスタッフに求められる資質は?

カスタマーサクセスの現場では、コミュニケーション能力、課題発見力、製品・サービス知識、問題解決能力、データ分析力が特に重要です。
これらは一見すると属人的なスキルと感じるかもしれません。しかし、マニュアルやナレッジベース、データ活用ツールなどの仕組みを整えることで、スキルを身に着け、全体のレベルアップが図れます。

【スタッフに求められる 5 つのスキル】

スキル 説明
コミュニケーション能力 顧客との信頼関係を築き、円滑にやり取りするための基礎
課題発見力 顧客が自覚していないニーズや改善点を見抜く
製品・サービス知識 自社の価値を的確に説明・提案できる知識
問題解決能力 発生した課題を迅速かつ的確に解決する
データ分析力 顧客データから行動や傾向を読み取り、提案・改善に活かす

 

資質に頼らず、仕組化することで品質を維持

組織としてカスタマーサクセスを実現していくためには、仕組化によって再現性のある顧客成功体験を作れる環境が必要です。
そうすることで、スタッフが 5 つの全ての資質を持っていなくても、丁寧なコミュニケーションを心がけ、スキルを向上させながら、誰もが一定レベルの品質で支援提供を可能とします。

【関連記事】

品質インテリジェンスがコールセンターの品質を管理、向上させる 

https://www.genesys.com/ja-jp/blog/post/quality-intelligence-redefining-the-future-of-contact-center-quality-management

従業員の満足度が顧客満足度に影響する

カスタマーサクセスに必要な仕組化は、スタッフが心にゆとりを持って顧客対応をする土台となります。そして自社製品・サービスの理解が深まり、自信を持って対応した結果、顧客の目標達成に貢献できれば、顧客の満足度も上がるという好循環が生まれるのです。

【関連記事】

最新型ワークフォースエンゲージメント実践ガイド

https://www.genesys.com/ja-jp/resources/practical-guide-workforce-engagement

 

カスタマーサクセスを推進するための仕組みの作り方

カスタマーサクセスを成功に導くためには、個々のスタッフの努力だけでは限界があります。顧客のニーズを把握し、継続的に価値を提供するためには、組織全体での仕組みづくりが不可欠なのです。ここでは、具体的な構築ステップを解説します。

顧客のニーズ、フェーズを理解し、パーソナライズサポート

カスタマーサクセスを推進するための仕組み作りの第一歩は、顧客のフェーズに合わせた支援方法を設計することです。そのためには、データを蓄積し、ユーザー理解を深めることも欠かせません。
導入初期の顧客には、アダプション(導入支援)でスムーズな立ち上げをサポートし、継続利用や課題解決が必要な顧客にはハイタッチ(密接支援)で個別ニーズに応えていきます。また、日常的な利用促進や情報提供にはテックタッチ(自動化支援)を活用し、効率と効果を両立させます。これらを組み合わせ、顧客ごとに最適なサクセス体験を実現していくのです。

【関連記事】

顧客管理システム(CRM)をどう選ぶべきか?目的に合わせた選び方

https://www.genesys.com/ja-jp/blog/post/how-to-choose-customer-management-system

目標の明確化・浸透

「支援することで顧客がどうなるべきか?」カスタマーサクセス部門の目標は明確化し、担当する従業員と社内に浸透させます。
また、顧客支援をするときも同様に、顧客の目標を明確化し双方の関係者で共有するようにします。

業務フローの整理

継続的、安定した品質で支援するために、業務フローを整理して、標準化したものをマニュアル(手順書)にします。きちんと整備しておくことで、ベテラン従業員の退職や業務拡大による新規採用にも慌てず対応できます。

成果目標( KPI )の共有

成果目標は、誰が見てもわかるように数値化、明確化して共有します。共有することでチーム内から有益な情報やアドバイスが得られるからです。
PDCA を回しながら、定期的に数値を評価することで、改善点や次の打ち手も見えてきます。

KPI に活用できる数値については、次の章で紹介します。

 

カスタマーサクセス導入のメリットと評価指標

カスタマーサクセスの取り組みは、感覚ではなく数値で評価することが重要です。売上や契約継続率の向上といった成果だけでなく、顧客満足度や信頼度も指標として可視化し、改善につなげていきます。
ここでは代表的な指標と、それぞれがもたらす効果を紹介します。

 LTV (ライフ・タイム・バリュー:顧客生涯価値)

ひとりの顧客が製品・サービスの購入で、一生のうちに企業にもたらす価値(利益)の総額を示します。カスタマーサクセスを推進することで数値が向上しているかを確認します。

【関連記事】

 LTV とは? 商材・目的別計算方法と高めるための打ち手をわかりやすく解説

https://www.genesys.com/ja-jp/blog/post/what-is-ltv

 NPS (ネット・プロモーター・スコア)

顧客が企業やブランドに対してどれだけの信頼と愛着を持っているか、感情を数値化して測定します。「この製品・サービスを友人知人にどの程度すすめたいですか?」という質問に 10 段階で答えてもらうシンプルな方式のため、導入する企業が増えています。

【関連記事】

 NPS とは?スコアの計算・調査方法と活用 真の動機へのアプローチとは 

https://www.genesys.com/ja-jp/blog/post/what-is-nps

チャーンレート(解約率)

一定期間内にサービスを解約した顧客の割合で、算出します。カスタマーサクセスが成功していれば、継続利用が見込めるため解約率を低く抑えることができます。

アップセルとクロスセルの促進

どちらも顧客からの売上を増やし、 LTV 向上に寄与します。

アップセル:製品・サービスのより多くの機能を拡張したり、ユーザー数を増やしたりして顧客単価を向上させること
クロスセル:別の製品・サービスと組み合わせたり、より付加価値の高いサービス(コンサルティングやセミナー等)を提供すること

【関連記事】

 AI でカスタマー満足度、セールス、労働力への取り組みを改善

https://www.genesys.com/ja-jp/resources/ai-improves-cx-sales-workforce

 

顧客ニーズを理解し、成功に近づけるための具体策

顧客の成功を実現するためには、単発の施策ではなく、カスタマーサクセスによる継続的な関係構築と最適なツール選定が必要です。特に AI やクラウド型プラットフォームの活用は、製品・サービスをパーソナライズできるため、実効性のあるサポートを効率的に行えます。

カスタマーサクセスを継続的に実現するためのシステム開発、ツールを選ぶ

かつては自社の目的や課題にあったシステムを開発するのか、既存のツールを選定するのかは多くのお客様が悩むポイントでした。
しかし、現在は自社でシステム開発するよりも、自社のニーズを満たす機能を持った SaaS モデルのツールを選定し、既存ツールを統合するなどカスタマイズして使うのが主流です。なぜなら、 SaaS モデルのツールは初期投資を抑えつつ、最新機能を迅速に利用できるという特長があり、ビジネスの成長や変化に素早く対応できるからです。また開発・保守コストやアップデートといったランニングコストが抑えられる点も評価されています。

ジェネシスのカスタマーサクセスサポート

Genesys Cloud CX は、 100 か国以上の大小さまざまな規模の企業から信頼されている、業界トップクラスのカスタマーエクスペリエンス・ソリューションです。

  • 顧客ロイヤルティーと従業員の定着率向上のために、あらゆる領域で AI を活用
  • オムニチャネルを一括で管理可能
  • 必要な機能のみを購入でき、アップグレードも簡単
  • 顧客対応の管理だけでなく、従業員エンゲージメントも統合

 

Genesys のコンタクトセンター支援システムについて詳しくはこちら
 Genesys Cloud CX 

 

ジェネシスクラウドで実現したカスタマーサクセス成功事例

ジェネシスクラウドを導入し、カスタマーサクセスを成功させている事例を紹介します。ぜひ、自社の課題解決のヒントにしてください。

事例 1 :顧客と生涯にわたり良好な関係を築く(キャセイパシフィック航空)

Cathay pacific 2

キャセイパシフィック航空は、世界最大規模の国際航空会社で、香港を拠点にアジア、オーストラリア、北米、ヨーロッパ、アフリカの 200 以上の都市に運航しています。
カスタマーエクスペリエンスの向上と、従業員の生産性向上を目的に、オムニチャネルに対応したシステムへの統合を検討した結果、 Genesys  のソリューションが採用されました。理由は WhatsApp 、 Facebook Messenger 、 WeChat 、 LINE  など、音声、 E  メール、 Web チャット、ソーシャル・メッセージング・チャネルを含む 10 以上の顧客チャネルを 1 つのプラットフォームに統合できるからです。
ワンクリックで複数のチャネルにアクセスが可能となり、オペレーター 1 人あたりの処理件数は 89 %増加し、 1 件あたりのコストは 37 %減少。顧客満足度も向上しました。

事例 2 :ハイテクで高頻度接触のオンライン・ショッピング体験をオーケストレーション(Blibli

Blibli 4

インドネシアを代表するトップ企業の EC プラットフォーム・ Blibli (ブリブリ)では、同社は顧客満足度を最優先事項に掲げ、一体型のシームレスなオムニチャネル・ショッピング・エクスペリエンスの実現に取り組んできました。
Genesys Cloud 導入のきっかけは既存のシステムが柔軟性、信頼性、拡張性に欠け、コロナ禍でリモートワークに対応できないという危機に瀕したことでした。 Salesforce との連携もオペレーターには好評で、生産性とサービスレベルも向上した結果、 e コマースにおいて最も高い NPS (ネット・プロモーター・スコア)を記録することができました。

まずはその目で体験しよう

Genesys Cloud の実際の動きを、オペレーター、スーパーバイザー、管理者それぞれの視点から体験し、評価してみませんか?
システムの導入・統合・移行には、関係各所の合意と協力が不可欠です。だからこそ、それぞれの視点から実際のシステムの主要な機能を操作し、厳しい目で既存システムと比較検討し、納得した上で決めていただけるようにしました。

今すぐ Genesys Cloud CX を体験する

https://www.genesys.com/ja-jp/campaign/genesys-cloud-guided-tour