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2025 年 10 月 15 日(水)、虎ノ門ヒルズフォーラムにて「 Xperience Tokyo 2025 」が開催されました。今年のテーマは「 Next Level of Experience ~エクスペリエンスを次のステージへ!」。リアル会場とオンライン配信を組み合わせたハイブリッド形式で行われ、 1000 名以上の方々にご参加いただきました。
イベントでは、 CX や AI 、 Genesys Cloud を軸に、これからの顧客体験( CX )をどのように進化させていくかを多角的に探るセッションを実施。国内外のリーダーや専門家が、 AI がもたらす変革と次世代 CX の展望を語りました。本レポートでは、その模様を注目の 4 つのセッションからご紹介します。
目次

[講演者]
いま、顧客体験の未来が動き出そうとしています。生成 AI からエージェンティック AI へと進化が加速する中で、企業は CX (顧客体験)と EX (従業員体験)の両面をどう変革していくのか。オープニングでは、ジェネシスクラウドサービス株式会社の代表取締役社長 ポール・伊藤・リッチーと、 Senior Vice President CCaaS Platform の Alex Ball が、 AI の進化とともに変わるエクスペリエンス・エコノミーの現在地と未来を語りました。

リッチーは、 Genesys Cloud が世界 6,500 社以上に採用され、国内 CcaaS シェア1位を獲得したと述べ、日本市場での成長と新規導入の広がりに感謝を示しました。その上で「クラウド企業から AI ファースト企業へ」という変革を掲げ、 CX を次の段階へ引き上げる構想を提示。「体験経済の時代においては、単なるサービス提供ではなく、 AI を活用して新しい価値を創造することが求められている」と語り、顧客体験のレベルアップを来場者に呼びかけました。

続く Ball は、 AI の進化が企業活動全体を再定義していると指摘しました。顧客が求めるのは「問題を早く、正しく、共感をもって根本的に解決する体験」であり、それを支えるのが AI の力だと強調。これまでの「効率化のための自動化」から「体験をオーケストレーションする AI 」への転換が進むと述べました。
さらに、 AI 活用における 4 つの思考転換として「アプリケーションから体験へ」「メトリクスから成果へ」「ツールからチームメイトへ」「ポイントソリューションからオーケストレーションプラットフォームへ」を提示。 AI を単なる補助ツールではなく、共に働くパートナーと位置づけ、人と AI が協調してより良い CX を生み出す未来像を描きました。

Ball は、 AI の進化を「予測」「対話」「生成」を経て、次の段階である「エージェンティック(自律的) AI 」へと解説。エージェンティック AI は自ら判断し、計画し、行動することで、企業内部の業務や顧客との接点を再構築する存在になると語ります。
Genesys Cloud では、このエージェンティック AI を中核に据え、 AI エージェントと人間が協働する仕組みを構築。自動化・補完・パーソナライズ・最適化という 4 つの柱を通じて、より高い顧客満足と業務効率の両立を目指すとしました。また、 AI の透明性とガバナンスを重視し、目的や権限を明確化した「責任ある AI 」の開発を進めている点も強調しました。


[講演者]
AI 活用が急速に進む中、企業が成果を生み出すためには「スピード」と「実装力」の両立が求められます。本セッションでは、 Genesys Cloud を活用するオリックス生命、パナソニック インフォメーションシステムズ、レオパレス 21 の 3 社が、 AI 導入・運用のリアルな取り組みを紹介。モデレーターを務めたジェネシスクラウドサービス株式会社 カスタマーサクセス部 部長 兵頭史子の進行のもと、導入プロセスから成果、今後の展望までが語られました。

オリックス生命では、 Genesys Cloud を 2023 年 12 月に導入を開始、翌年 4 月には当初導入を予定していた部門には導入完了しています。現在は約 400 席規模で運用しています。代表窓口ではボイスボットを導入し、商談要件のヒアリングから内容共有までを自動化。オペレーターを介さずに要件を特定し、文字起こしした内容を管理部門へメール連携する無人対応を実現しています。
さらに、エージェントコパイロットの検証も進行中で、同機能に搭載される会話内容のテキスト化・要約・ FAQ 検索の 3 要素を中心に評価を実施。結果を踏まえ、 11 月には本格運用を予定しています。検証は 10 名体制で開発・運用環境を活用し、機能の安定性を確認してから本番導入する流れを確立。課題発生時にはプロフェッショナルサービスと連携して解決し、週次アップデートを随時確認しながら新機能を業務に取り入れる柔軟な体制を築いています。

パナソニック インフォメーションシステムズでは、 WebRTC と AI ボイスボットを組み合わせたコンタクトセンターソリューションを展開しています。 WebRTC 経由での入電時に、 AI が修理や購入相談など問い合わせ内容を自動で分類する仕組みを導入しています。また、フリーダイヤルでは AI が簡易な問い合わせに対応し、約 7 割の案件を自動解決。複雑な内容のみをオペレーターへ引き継ぐ形で、効率化を進めています。
導入プロジェクトは、家電コールセンター部門、 CRM 等のアプリ部門、 CTI やネットワーク等のインフラ部門など複数の部門が協働して推進し、テストや受け入れ検証を重ねてリリース。半年間で約 4,200 件の入電に対応し、工数削減効果が見込まれています。今後は AI ボイスボットの精度向上とともに、日本語認識の改善にも期待を寄せています。

レオパレス 21 では、 2024 年 10 月よりスピーチ&テキストアナリティクス( STA )を活用。通話内容の文字起こしを CRM ツールの Salesforce と連携し、コール理由や案内内容の確認を効率化しています。 10 月には電話回線のクラウド化を完了し、リアルタイムでのテキスト化が可能になったことで、今後は自動入力・要約機能の活用による業務改善を目指しています。同社では、システム担当者が一人で導入を主導。セミナーやオンラインリソースを活用し、辞書登録などの地道な改善で精度を約 98 %まで高めました。簡単な設定で成果を上げられることを実感しながらも、今後はチーム体制での管理強化と AI 要約の自動入力による効率化を見据えています。


[講演者]
ジェネシスクラウドサービス株式会社の吉本淳氏( EaaS 第一営業本部 シニア AE )と安達一真氏(ソリューションコンサルティング本部 シニアソリューションコンサルタント)が登壇し、 AI の進化がもたらす顧客体験( CX )の変化と、 Genesys Cloud の最新機能を紹介しました。

吉本はまず、 AI 活用の成熟度を示す「エクスペリエンス・オーケストレーションのレベル」を紹介しました。
サービスエコノミーの段階では IVR やルールベースのボットによる単純な自動化が中心でしたが、エクスペリエンスエコノミーの段階では、自然言語を用いた会話生成とパーソナライズ対応が実現されます。ジェネシスはすでにレベル 4 に到達しており、今後は AI が自律的に判断・行動するレベル 5 「エージェンティック AI 」の世界を目指していると述べました。
AI 活用において重要な視点として、
の 4 点を挙げました。
その上で、 Genesys Cloud では 1 つのプラットフォーム内に多様な機能を統合し、その中核に「エージェンティック AI のフレームワーク」を据えることで、顧客接点全体をオーケストレーションできる設計になっていると紹介しました。 AI 機能は現在 12 種類に拡大しており、今後も精度向上と機能強化が続くと説明しました。

続いて安達が、架空の企業「ジェネシス・ソーラー」を舞台にしたデモンストレーションを実演。顧客が太陽光発電設備のトラブルを報告するシナリオを通して、バーチャルエージェント「リトル GC 」とオペレーターの協働による応対を紹介しました。
リトル GC は自然言語での対話を通じて顧客情報や機器情報を自動取得し、訪問予約まで完了。会話の流れをスムーズにオペレーターへ引き継ぐことで、顧客体験を損なうことなく効率的な対応を実現しました。
さらに、応対後にはエージェントコパイロットが会話の要約を生成し、訪問日時や型番などの情報を自動抽出。 AI インサイトでは、顧客の感情変化や問い合わせ理由を分析し、品質評価機能 が自然言語ベースでオペレーターの応対を自動採点する様子を紹介。評価基準を柔軟に設定できる点や、ばらつきのない評価が行える点をデモで示しました。
安達は「 AI が業務を支援することで、スーパーバイザーは分析やコーチングに時間を割ける」と語り、 AI と人の協働による CX 向上を具体的に示しました。
「次世代 CX の幕開け: Genesys Cloud が切り拓くエージェンティック AI の可能性」デモビデオ

最後に 2 人は、管理者支援機能「管理者パイロット」を紹介しました。
管理者が自然言語でシステムに質問し、運用課題や改善点を把握できる仕組みで、たとえば「ボットから有人対応への転送が多い理由」を尋ねると AI がデータを解析して回答します。
吉本氏は「自然言語で分析や改善策を得られることで、運営のスピードが格段に上がる」と述べ、今後の展開に期待を寄せました。
このセッションでは、 AI 活用の成熟度と設計思想、そして AI が支援する顧客応対・運営管理の実例を通じて、 Genesys Cloud が描く次世代 CX の実像が伝えられました。

[講演者]
AI テクノロジーの進化は、私たちの社会や顧客体験をどのように変えていくのか。本セッションでは、「ドラえもんを本気でつくる」の著者でもある日本大学の大澤正彦氏と、アクセンチュア株式会社の坂本佳子氏を迎え、 AI と人との協働、そして 2030 年の顧客体験の未来をテーマに議論が交わされました。モデレーターは Forbes JAPAN の谷本有香氏とジェネシスクラウドサービス代表取締役社長のポール・伊藤・リッチーが務めました。

セッションの前半では、坂本氏がアクセンチュアのグローバル調査レポート「 Life Trends 2025 」を紹介。 AI やデジタル技術の急速な普及が進むなか、「 Pause and Rebalance (立ちどまり、リバランスする)」というキーワードが重要であると指摘しました。
デジタル犯罪などによる「ためらいのしわ寄せ」、即時性を求める「せっかちエコノミー」、 AI 登場によって揺らぐ「仕事の尊厳」、リアル回帰を示す「つながりの再野生化」など、変化の兆候をもとに、企業が今後重視すべきは「信頼の再構築」であると強調しました。「 AI はどこまで人の役割を担うのか。その境界を明確にし、認知的信頼と情緒的信頼の両方を築くことが欠かせません」と坂本氏は語ります。
さらに、 AI を仲間として受け入れる文化的素地に日本の強みがあると指摘。「 AI を妖怪のような存在(人でも機械でもない、共に生きるパートナー)」と捉える日本独自の感性が、世界の AI 文化に新しい方向性を与える可能性を示しました。

続いて大澤氏は、 AI との関係を「道具 AI 」と「仲間 AI 」に分類し、後者がもたらす新たな信頼の形を説明しました。
「 AI は意図を持っているように見えるとき、私たちはそこに心を感じる」と大澤氏は述べ、人と AI の関係を通じて「人と人の協働」の在り方をも見直すべき時期に来ていると指摘しました。
また、日本では古くから「ものに心を感じる」文化が根づいており、アニメや信仰に見られる精神性が AI 研究の国際舞台でも注目されていると紹介。「心を通わせる AI を研究する国際会議では、日本の論文採択率が過半数を占める年もある」と語り、日本が心を感じるテクノロジー分野で世界をリードしている実態を明らかにしました。
大澤氏は、「 AI に心を感じることができるのは、私たち自身が人や物に善意を見出す力を持っているから」と述べ、 AI との協働が人間社会の再発見につながると締めくくりました。

後半では、企業の AI 活用や AI と人との協働というテーマで議論が行われました。
坂本氏は「 AI を単なる効率化の道具として扱うと、企業の個性やブランドが失われる」と指摘。 CX における差別化においては「すべてが効率的になれば、ブランドの記憶も残らない。だからこそ摩擦や余白、人の温度を残す体験設計が重要」と強調しました。
また、坂本氏は企業が AI を活用する上では、経営理念やパーパスと連動した「文化としての AI 活用」を考える必要があるとし、「単なる IT 投資ではなく、変化を続けられる文化をつくることが、長期的な競争力になる」と述べました。

セッションの最後には、「 2030 年に向けての提言」として登壇者それぞれが未来への展望を語りました。
大澤氏は「 AI と人が協働する前に、人と人が真に協働できているかを見直す必要がある」と指摘。 AI と共に「平和をつくる技術」の可能性にも触れました。
坂本氏は「労働人口減や社会の不安が増す中で、日本が AI 時代をチャンスに変える鍵は人との協働にある」とし、 AI と文化・感性を融合させる日本発の価値創出に期待を寄せました。
最後にリッチーは、「エージェンティック AI の進化によって、オペレーターと AI が共に働く時代はすぐそこまで来ている」と述べ、 AI と人間がともに成長する未来への希望を語り、セッションを締めくくりました。

AI の進化が顧客体験( CX )の在り方を根本から変えつつある今、エクスペリエンスは「設計するもの」から「共に育てるもの」へと進化しています。
Xperience Tokyo 2025 は、企業と人、 AI と人が協働しながら「次のレベルの体験価値」を描くための場となりました。
顧客にとっても、従業員にとっても心地よいエクスペリエンスを創り出す。 Genesys Cloud の挑戦は、これからも続いていきます。
Xperience Japan 2025 : ” Next Level of Experience ~ エクスペリエンスを次のステージへ!”
本イベントの下記の講演をオンデマンド配信しております。ぜひ、ご視聴ください。
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