問い合わせ対応は、顧客満足度や企業の信頼性に直結する重要な業務です。一方で、対応に時間がかかる、品質にバラつきがある、業務が属人化しているといった課題を多くの現場が抱えています。

本記事では、問い合わせ対応とその重要性、よくある 4 つの課題とその改善策を、施策例とともに解説します。そして、効率化に欠かせない AI やナレッジツール、業務管理システムを活用し、顧客だけでなく社内外からの問い合わせ対応を効率化する方法、組織全体で応対品質を底上げするためのポイントもお伝えします。

目次

 

問い合わせ対応とは何か、またその重要性

問い合わせ対応とは、顧客や社内関係者からの質問・要望・不満などを聞き、それらに対して回答をする業務です。単なる「応答業務」と捉えられがちですが、実際には 顧客体験( CX )の質を左右し、サービス改善や企業価値の向上に直結する重要なプロセスといえるでしょう。
つまり、問い合わせを外注する場合でも、自社の窓口として応対品質を管理する必要があります。

顧客満足度と信頼性の向上

顧客からの問い合わせに対する応対品質は、満足度や信頼感の獲得に直結します。特にクレーム対応は、ネガティブな気持ちになっている顧客の信頼を回復するチャンスとなり得ます。なぜなら、誠実で迅速な対応や解決提案が「また利用したい」という気持ちにさせ、信頼構築や顧客満足度向上に繋がるからです。

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商品・サービス品質の改善

問い合わせの内容は、商品やサービスに対するフィードバックの宝庫です。ただ対応して終わるのではなく、 FAQ やクレームについて「なぜ、この問い合わせが入ってくるのか?」という視点で分析することは、商品やサービスの改善やマーケティングに役立ちます。
1 人のオペレーターにとっては、たった1件だとしても、窓口全体では同じ内容の問い合わせが10件来ていたということは、よくある話です。定期的に相談傾向を分析し、問い合わせが多い内容については、「よくあるお問い合わせ( FAQ )」としてホームページに掲載したり、メールマガジンなどで知らせることで、問い合わせ件数は減らせます。
また、良い話も悪い話も開発やマーケティングにフィードバックできるよう、問い合わせ対応の現場と商品開発やマーケティング部門をつなぐルートを構築することも重要です。

企業・ブランドイメージのへの影響

昨今では、顧客応対の内容は SNS や口コミを通じて広がり、ブランドの評判に直結します。特にトラブル発生時に適切に対応することで「信頼できる企業」として評価されたり、逆に対応が悪いとブランド毀損につながったりします。
万一のトラブルに備え、システムで通話内容を自動録音するコールセンターも増えています。

 

問い合わせ対応を効率化するための課題整理と改善策

多くの現場では、毎日の問い合わせ数を予測したり、効率的に対応したりするための試行錯誤が行われています。ここでは代表的な 4 つの課題と、それぞれに対する解決策をご紹介します。

よくある課題 ① 問い合わせ応対時間のバラつき

オペレーターごとのスキルや業務手順の違いが、応対スピードに差を生み出します。個々の経験の差もあれば、回答に必要な情報検索に時間がかかる、複数質問されたときの優先度判断が難しいといった要因も存在します。

施策例

  •  AI の導入による一次対応の自動化
    チャットボットや音声 AI を導入し、定型的な質問は自動対応へ回すことで人の負担を軽減。人が必要な案件だけ切り分けられる体制を整える。
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  • 対応優先度ルールやフローチャートの明確化
    問い合わせを緊急度・重要度で分類し、自動でフローを割り当てることで、迷わず対応に着手できるようにする
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  • ナレッジツールの活用
    FAQ や社内ナレッジベースを整備し、必要な情報を素早く検索できる環境を整える。
    【関連記事】 ナレッジマネージメント

よくある課題 ② 属人的で応対品質が安定しない

マニュアルが無いと、対応がオペレーターの経験や知識に依存し、応対品質にバラつきが生じます。これらの背景には、新人教育が難しい、情報共有不足といった問題があるので、施策で解消します。

施策例

  • 対応マニュアルの整備
    共通の対応基準を作っておけば、新人でも安心して一定品質で応対できる体制を構築できます。
  • 教育・ OJT 体制の見直し
    ロールプレイやケーススタディで、実践的なスキルを育成できます。
  •  AI によるオペレーター支援
    オペレーターの画面にリアルタイムで推奨回答や次のアクションを提示し、経験による差を補完します。 システムによっては、応対履歴の入力も支援してくれるので、後処理時間も短縮することが可能です。【関連記事】 AI ベースのエージェント・コパイロット

  • 品質チェックとフィードバック
    応対ログを定期的に分析し、改善点をフィードバックすることで応対品質を継続的に向上させます。【関連記事】 品質保証とモニタリング

 

よくある課題 ③ 情報の分散で、業務が非効率になる

顧客データや製品情報が、それぞれ別のシステムで管理されていると、システム間の連携不足による二重管理(同じ情報を複数回入力するなど)が発生します。その結果、情報検索に手間がかかって顧客を待たせたり、応対時間が長引いたりして、業務効率が悪化するのです。

施策例

  • システム連携による情報の一元管理(二重管理の解消)
    CRM や SFA と連携させることで、入力作業の重複やメンテンナンスコストを削減します。【関連記事】 連携機能
  • 情報更新の運用ルール策定
    常に最新情報にアクセスできるよう、情報更新のルールを定義し、データ入力の担当部署と、情報に齟齬が発生したときの確認スキームを明確にします。
    商品やサービスに関わる基本的な情報は、問い合わせ対応をするオペレーターのほか、社内関係者も閲覧できるようにしておけば、社内からのお問い合わせを削減できます。

よくある課題 ④ コストとリソースの制約

問い合わせ対応は人件費のかかる業務です。特に単純作業の頻度が増えると、リソースが逼迫する傾向にあります。

施策例

  • 効率化による応対時間の短縮
    応対フローの見直しや応対履歴を自動入力できるシステムの導入により、 1 件あたりの業務時間を短縮することができます。

 

まとめ

問い合わせ対応は、企業の信頼性や顧客満足を大きく左右する重要な業務です。顧客情報が属人化や情報分散といった課題に対しては、マニュアル・フローチャートの整備や AI ・ナレッジツールを用いた効率化が有効です。
また、業務の改善や効率化は、現場で働く従業員の満足度向上にも寄与するため、社内外に好循環をもたらします。
そのためには、問い合わせ対応の効率化がコストの削減だけでなく、品質向上やブランド価値強化にも直結することを社内に周知し、共通認識として定着させ、全社一丸となって取り組むことが重要です。

 

その他問い合わせ対応に関する質問:( FAQ )

最後に、問い合わせ対応に関して、よくご相談頂く内容を FAQ 形式でご紹介いたします。皆様のコールセンターの課題解決にお役立てください。

Q:問い合わせ対応を効率化するには何から始めればいいですか?

まずは現状の課題を可視化することから始めましょう。その上でAI導入やナレッジベース整備など、段階的に改善していくのが効果的です。
例えば、問い合わせの放棄率(入電に対して受話しきれていない割合)が高い場合、 1 人あたりの処理時間にバラつきがあるようであれば、教育などで平準化する施策や問い合わせ内容を分析しAIによる自動応答で改善が見込めるでしょう。

ただし、多くの会社にとって、課題は大なり小なり複数存在するのが現実で、優先順位をつけつつ、複合的に解決することが効率化の近道です。
弊社は日本国内はもちろんのこと、グローバルを含めた多くの課題解決策を提供することができますので、こちらよりお気軽にご相談ください。

Q:問い合わせ対応業務の種類とは?

問い合わせ対応業務は、大きく 2 種類に分けられます。わかりやすくお伝えするために、社外(顧客や取引先、検討中の見込み客も含む)、社内(他部署や従業員)と定義しました。

社外対応:
顧客・取引先への対応で、注文確認やクレーム処理、利用方法の案内などを行います。契約内容を迅速に確認して、電話・メール・チャットと複数のチャネルの情報を一元管理できることが望ましいです。内容によって、営業部門などの担当者にフィードバックが必要となるので、顧客管理のデータを連携させておくと便利です。

社内対応:
従業員や他部署からの問い合わせのほか、ショールームなども想定し、社内のヘルプデスクとして重要な役割を担います。営業・技術部門・バックオフィスとの連携が不可欠なのはもちろん、クレームや商品の不具合など緊急度の高い事案を通知するなど、ナレッジ共有を迅速に行える仕組みも構築しておきましょう。

Q:問い合わせ対応の目標( KPI )値とは?

問い合わせ対応の目標値には、コールセンターのパフォーマンスを評価する指標を使います。代表的な指標は、初回解決率( FCR )、平均処理時間( AHT )、顧客満足度( CSAT )、ネットプロモータースコア( NPS )などがあります。
問い合わせ対応の窓口が、社外向けなのか社内向けなのかによっても、指標は変わってきますので、下記を参考にしてください。

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