2022 年には、対話型 AI により人件費が 800 億ドル削減されると予想されていました。ChatGPT の登場により生成 AI が注目を集め、現在もカスタマーエクスペリエンス(CX)専門家の間では、このテクノロジーの話題で持ちきりです。簡単に利用でき、自然な形で、個性を備えた存在のように顧客に情報を提供できるこの AI テクノロジーは、CX 専門家の目には非常に魅力的に映っています。生成 AI は、これまで対話型 AI を使用していた人には特に魅力的に映ります。

このように生成 AI について明るい未来が語られる中、果たして対話型 AI への投資を継続すべきか疑問に感じている方もいることでしょう。しかし、対話型 AI の終焉を予測するのは早計です。

Gartner は 2023 年に、対話型 AI がコンタクトセンターで最も急速に成長しているセグメントであると報告しています。同調査では、AI によりインタラクションが強化されてはいるものの、完全に人間を代替するまでには至っていないことが明らかとなりました。つまり、優れたエクスペリエンスを実現するためには、依然として人間の関与が必要なのです。AI がこれまで人の手によって支えられてきたエクスペリエンスを完全に置き換えるという予測には明らかに至っておらず、生成 AI と対話型 AI は共存する余地があります。生成 AI により、さらに優れたカスタマーエクスペリエンスを提供できると期待される一方、対話型 AI の利用方法にも依然として工夫の余地が残されています。

消費者にとっての対話型 AI と生成 AI

カスタマーエクスペリエンスに生成 AI と対話型 AI のどちらを利用するかは、消費者と、製品やサービスを提供する企業との会話の性質に応じて変わります。生成 AI を利用した会話は、スムーズで自然な文章を通し、幅広いトピックについての情報を提供することを目的としています。生成 AI を利用していると、友人と話しているような感覚を覚えるでしょう。友人は、あなたの目的地に関する興味深い詳細情報や、目的地へのアクセス方法についてさまざまなオプションを提供してくれます。ただし、この友人は、目的地まで車で送ってくれたり、タクシーを呼んでくれたりはしません。対話型 AI を利用した場合は、より限定されたトピックについての、無機質な会話となります。会話はデジタルデータ、あるいは音声を通して行われます。従来の「はいの場合は 1 を、いいえの場合は 2 を押してください」のような操作を必要とした IVR に対話型 AI が組み込まれ、自然な言葉で対話できるようになりました。そのうえで、補足的にデジタルパッドを使用し、システムに情報を送信するためのデュアルトーンマルチ周波数(DTMF)も利用されます。いずれの場合も重要なのはコンバージョンです。これらの会話は、人間によるサービスインタラクションに似せて構築されており、最終的には購入、返品、アカウントのリセット、エスカレーションなどのアクションへとつながるのが一般的です。

会話の設計担当者にとっての対話型 AI と生成 AI

インタラクションジャーニーに会話のエクスペリエンスを組み込む設計担当者にとっても、対話型 AI と生成 AI には違いがあります。生成 AI では、プロンプトエンジニアリングとトレーニング済み大規模言語モデルを組み合わせることにより、自動的に会話を生み出すことができます。プロンプトエンジニアリングとは、実質的に世の中のあらゆる場所のあらゆることについて収集された膨大なデータに基づきトレーニングされたモデルから適切なデータを引き出すための方法を探る作業です。AI に適切なパラメーターを指定して適切な質問を投げかけることにより、適切な情報を取得するための適切な枠組みを与える作業がプロンプトエンジニアリングです。アートでも科学でもあります。対話型 AI ボットは、インテントに基づき定義されたパスを使用した会話の流れとして設計されます。対話型 AI ボットは、特定の分野における特定の質問に答えられるようプログラミングされます。対話型 AI に、AI が把握している事柄に一致しない質問をすると、「もう一度質問をお願いします」のような回答が返されます。生成 AI ではこのような状況が起こることはまずありません。生成 AI は膨大なデータセットに基づいてモデルがトレーニングされているため、通常何らかの回答を返すことができます。生成 AI のアルゴリズムでは、学習した言語パターンに基づき、次に発すべき最適な言葉が計算されます。一部の生成 AI モデルでは、もっともらしい嘘が回答として返されることがあり、これはハルシネーション(幻覚)と呼ばれています。対話型 AI は、顧客の要求を受け取り、インテント(質問の要点)を抽出します。インテントが特定されると、会話の設計に応じて次の処理が決まります。会話の設計担当者は、例えばデータの検索処理を組み込んだり(「口座の残高を見せてください」という質問への対応)、ナレッジベースに基づき回答を作成したりできます。対話型 AI モデルは、一般的に非常に限定的なトピックにのみ対応でき、特定の分野の質問にのみ回答することができます。生成 AI モデルは、一般的な対話型 AI モデルよりもはるかに多い数十億にのぼるパラメーターを有し、さまざまなトピックについて理解できる、よりスケールの大きなモデルです。ある書籍があるとします。1 ページ(または 1 章)だけを読み、その書籍についての記述式問題に答えるのが対話型 AI。書籍全体、著者の経歴、書籍の背景にある歴史状況、書籍についての他の書評までを読んだうえで記述式問題に答えるのが生成 AI であると考えると分かりやすいでしょう。

会話以上の処理を求められる対話型ボット

生成 AI にのみに注目して対話型 AI を顧みないことは問題です。幅広いトピックについて楽しく会話できるボットを取り入れても、現実に顧客がコンタクトセンターに持ち込む問題の解決にはつながりません。スムーズな会話を展開できるようにしたところで、顧客が経験している問題をチャットボットを通して解決することにはつながりません。データによると、チャットボットを使用したユーザーは以下のような感想を抱いています。

  • 77%:チャットボットにストレスを感じる
  • 88%:人間の担当者の方が良い
  • 35%:チャットボットは、ほとんどの場合、効果的に問題を解決してくれる

ボットの問題は、ボットとの会話がどれほどスムーズで楽しいものかということではありません。消費者がサポートを求めてコンタクトセンターに連絡する場合、楽しく会話をしたいとは考えていません。むしろ、サービスボットがタイムリーに問題を解決できなければ、製品やサービスについて抱えたストレスを訴える強い口調の E メールを ChatGPT で作成することになりかねません。サービスやサポートを求めてブランドに連絡する顧客は、おしゃべりではなく、抱えている問題の解決を望んでいます。これは時間的な影響を受けます。例えば、顧客が翌週には住宅購入の契約をまとめる必要があるにもかかわらず、住宅ローンが依然として承認されていないような場合です。このような場合に、住宅ローンの仕組みや、金利の計算方法について教えられても何の解決にもなりません。あるいは、体調の悪い患者が診療の予約をしたいと考え、医療機関に電話した場面を考えてみましょう。自分の健康状態やその他の病状について詳しい情報を教えてもらい、自分自身で診断したいと思う患者はいません(素人の判断では健康に有益な結果をもたらしません)。また、家庭内の虐待の被害者が助けを求めている状況もあります。この場合、タイピングや会話に時間がかかるほど、深刻な危険に陥る可能性が高くなります。顧客は実際にこのような場面に遭遇することがあります。このような場面では、対話型 AI こそが求められるソリューションとなります。

優れたボットの設計

Omdia のカスタマーエンゲージメント部門の Principal Analystであるデビッド・マイロン氏は、最近開催されたウェビナーの中で、「The State of Digital CX 2023(デジタル CX の現状 2023 年版)」レポートから引用する形で、AI を成功に導くためにすべきこと、すべきでないことを挙げています。いくつかの統計やインサイトについて概要を紹介していますが、会話の自動化に向けた AI 導入が成功するかどうかを見極める際に重要となる 1 つの統計があります。

63%
コンタクトセンターにおいて AI の導入により高い価値を提供できている主な理由として、AI 導入による成果を重視した戦略を策定していることを挙げた企業の割合

会話のことではなく、結果についてです。お客様との取り組みを通じて、ボットが会話できるようにトレーニングする作業ではなく、ボットをビジネスフローに組み込み、適切なデータや分析機能と統合させる作業が全体の 85% を占めることが分かりました。対話型 AI Principal Product Manager のミッチ・メイソンは、ポッドキャスト Tech Talks in 20(20 分で学ぶ最新テクノロジー)の最新のエピソード(本ブログ執筆時点)「Best practices for using chatbots to enhance the customer journey(カスタマージャーニー強化のためのチャットボット使用に関するベストプラクティス)」の中で、これらのあらゆるトピックについて話しています。また、実世界でどのように適用されるかについても説明しています。以下に、対話型 AI を最大限に活用するための鍵を示します。

  1. 明確なビジネス成果を念頭に置く: まずは計画を策定し、成功と呼べる状態を明確に描きます。
  2. 必要なデータとその入手方法を理解する: ミッチ・メイソンのエピソードでは、効果的なサービス提供のためにアカウント管理システムや投資商品のコンテンツにアクセスする必要がある金融サービス分野の仮想アシスタントの例が用いられています。
  3. 状況を理解する: ボットは、インタラクションフローにシームレスに適合し、カスタマージャーニーの他の要素とも連携できるようにする必要があります。
  4. 顧客が行き詰らないようにする: 人間の手を借りなければならない状況も存在します。ボットが顧客を孤立させないようにします。

Genesys の AI や、カスタマージャーニー改善のためのチャットボットの活用方法について、詳しくはTech Talks in 20(20 分で学ぶ最新テクノロジー)ポッドキャストの最新のエピソードをお聴きください。