パネルディスカッション「 CXにおける AI 活用のこれから」

2023 年 9 月 12 日に開催された G-Summit Japan 2023 のパネルディスカッション 「 CX における AI 活用のこれから」 では、 AI 活用の最先端を行く企業のキーパーソンをお招きし、コールセンターにおける AI 活用の現状や、 AI の今後の活用方法などをディスカッションして頂きました。ディスカッションは大いに盛り上がり、非常に実践的で示唆に富むセッションとなりました。本レポートは、2 回に分けてお送りします。さらなる詳細については、是非ビデオアーカイブもご覧下さい。

 

■パネラー
株式会社 ELYZA:取締役 CMO 野口 竜司 様
株式会社 NTT ドコモ:情報システム部長 井尻 周作 様
トランスコスモス株式会社  CX 事業統括 DX 推進本部 DX ソリューション統括部 副統括部長:高橋 亮太 様
ジェネシスクラウドサービス株式会社:ポール・伊藤・リッチー

■モデレーター
Forbs Japan:谷本 有香氏

 

谷本:今年、 ChatGPT の出現によってコールセンターを取り巻く状況は大きく変わりました。今後はどのように AI に向き合い、活用していけば良いのでしょうか?

ELYZA 野口:これまでの第 3 次 AI も、コンタクトセンターでは活用されていたと思います。今は第 4 次 AI ブームと言われており、今後は AI の影響をさらに大きく受けることになるでしょう。AIの4タイプ分類
これまでの AI も、見る・予測する・話す・動く・作るという力を持っていました。そして、お客様が次に求めるものは何かという「顧客予測」が行われてきたと思っています。しかし、これからの言語系の AI は、特に話す力が既に人間の能力を超えてしまっている部分があります。この言語系の  AI  というのが、今後のコールセンターの変化の中心になると思います。

ドコモ井尻:ドコモも、まさに第 3 次 AI を使っています。コールセンターの課題は大きく 2 つあって、 1 つは離職率が非常に高いということ、そしてもう 1 つはオペレーターの学習に時間がかかることです。提供しているサービスが複雑なため、全てを覚えてお問い合わせに応えないといけない。このような課題がある中、社内にあるコンテンツやノウハウをうまく利用するとともに、 AI のエンジンを入れて、問い合わせに対して最適な答えを出すということをしていました。あとは、 NTT グループの技術を使って音声をテキスト化し、後でスーパーバイザーがチェックするということもしています。

NTTドコモ紹介ELYZA 野口:音声のテキスト化って結構コストがかかると思いますが、全量をテキストにしてるんですか?

ドコモ井尻:いくつかセンターなど場所を限定して POC 的に始めて、これから広げていこうというところです。そういう意味で全量ではないです。

ELYZA 野口:これまでも AI を活用してきたからこそ、これからも連続的に、スピード感を持ってできるということですね。

ドコモ井尻:たとえば、最新の iPhoneに ついてお客様がコールセンターに電話でお問い合わせをされた場合、スペックなどについてやり取りをして、「じゃあ実際に実機見たいです」となれば近くのショップに繋ぐわけですが、そのお客様がショップに訪れた際に、また 1 から説明する必要が無いようにしないといけない。なおかつもう少し高度化して、お客様が普段どういう色が好きなのか、そういう傾向も分析しておけば、顧客体験が最大化される。そのような取り組みをおこなっていきたいと思っています。

ELYZA 野口:顧客対応における申し送りもちゃんとしながら、ユーザーさんのデータも付与して顧客体験を高めていくということですね。

トランスコスモス高橋:私たちは、これまでは話す力と予測する力を中心に取り組んできました。代表的なところではチャットボットで、いかに自己解決するかというところがAIの取り組みの中心です。それ以外では、私たちはコミュニケーションのタッチポイントを色々持っていますので、 Web サイトのお客様の行動ログを解析して AI で最適な FAQ をレコメンドするとか、あとは購入目的で入ってきたお客様がカートに入れる前に離脱してしまうとか、もしくは電話してしまうといった時に、アクセスログを解析してどこに問題があるかを探します。しかし、見つかった問題点全てを一度に進めることはリソース的にも難しいため、そこに AI の予測する力を使います。顧客設定のデジタルフロントをすべてカバーするTCI-DX Supportそして、私たちはマジックイベントと呼んでいるんですけど、どの問題を最初に改善するのが最も効果的かとか、コール削減に繋がるのか、というところを可視化して施策を実行します。

ELYZA 野口:「マジックイベント」っていい言葉ですね。業種業態によってどこから解決するべきかというのが大事だなと思いました。すごく素敵なワードです。

ドコモ井尻:チャットの後ろに AI を入れて、本当に必要なものだけ有人に繋ぐということですか。

トランスコスモス高橋:おっしゃる通りです。

谷本: AI って、質問する能力によって結果が違うことがあるのではないでしょうか。これからデジタル慣れしている人じゃなく、シニアの方たちが使っていく時に、どのように対応されますか?

ドコモ井尻:今のご質問は、プロンプトエンジニアリングと言われているものかなと思うんですけど、その辺は是非私も伺いたいです。

ELYZA 野口:これまでのチャットボットは、 FAQ のリストを用意しておいて、 Q と A のつながりを持っていて、お客様からのお問い合わせがどの Q にあたるのか、どれが近いのかっていうのを、言語の近さによって検出し、過去にあった答えを返していました。今後は抽象度が高いものや、言葉が間違っているようなお問い合わせに対しても、生成 AI や LLM によって一次解釈するなり、要約するなりした上で、また QA にぶつけるといったことができます。ですので、インプットに対する精度の向上というか、再アレンジみたいなことができます。

リッチー:予測型とか会話型の話がありましたが、予測型をしっかり実現すれば顧客満足度に繋がり、お客様の要求のトレンドから売上に反映させることもできます。そして話す方は、顧客満足を徹底的に上げられる部分があると思うので、これらが融合することで新たな時代が開けるのではないかなと思っています。ドコモさんやトランスコスモスさんがやってらっしゃることが、今後お互いにシェアできるようなモデルになってくると、消費者としていろんな意味で世界が変わるのかなと思いました。

谷本: AI の導入って、皆さんのような AI の専門家がいる企業は良いですが、そうでない場合はすごく難しいのではないでしょうか?

ドコモ井尻:我々は、ジェネシスの仕組みを使ってコールセンターを高度化していますが、中小のお客様は自前でやると本当に大変だと思います。ですので、我々は今後、外販のビジネスにつなげていきたいと思っています。我々のシステムをそのまま入れても良いですし、マネージドサービスとして提供することもできるかなと考えています。今後は自前で全部やらなくても、そういうサービスを気軽に使える世の中になっていくんじゃないでしょうか。

ELYZA 野口:ドコモさんは最初に自ら活用して、自らを事例にしていくということですね。私も色々なコールセンターの方々とお話しをするんですけど、例えば AI を使う重要なユースケースが 10 あったとして、どこから入るかっていうのが 1 番のポイントだと思います。例えば、音声をテキスト化して、そのテキストを活用するような 2 段階のステップがあるとハードルが高くなります。そうではなく、すでにテキストになっているものから始めて、それに関して LLM の実力を見ていくなど、まずは社内限定で使って、うまくいったらそれをお客様にお届けするといったように、段階論というかロードマップですね。そういうステップを定義できれば、着実に前に進んでいけます。逆に、ちょっと難しいところからいきなり始めると、 POC 失敗しましたみたいなことになりかねません。そういった攻め方の戦略というのが、非常に重要なんじゃないかなと思います。

谷本:そういった詳しい方がいない時は、どうしたら良いでしょうか ?

ELYZA 野口:やはり会社内の関係部門の方とか、 AI とかにちょっと詳しいとか、前のめりな方と一緒にやっていくのがいいでしょうし、さらに外部の専門家もしくは経験者がいれば、そこにお願いすることだと思います。

トランスコスモス高橋:私たちのサービスやソリューションを入れればすぐに解決するかっていうと、そうではないと思っています。業務を知っている方に関わっていただくことが一番重要で、どの企業様にもそういった方は多数いらっしゃると思いますので、そういった方をプロジェクトに入れていただく。そして、ソリューションとかその改善の施策の手段っていうのは、私たちの方がもしかしたら豊富に持ってるかもしれないので、そういったところでご一緒させていただくことによって問題解決がいろいろできるんじゃないかなと思います。

後半は、生成 AI への期待や活用方法について伺います。

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