【事例】優れたコールセンターソリューションは命をも救う:福祉領域におけるプラットフォームの活用

ゲストによるブログ投稿 執筆者: 危機関連サービス/カナダ Kate Kuehn

満員の地下鉄またはバスを想像してみてください。プレミアム席や立席も満員の状態です。たくさんの人がいて、それぞれが目的地に向かっている最中です。通勤している人もいれば、家に向かっている人や、友人や家族に会いにいくという人もいるでしょう。ここで、こうした満員電車またはバスが3台あることを想像してみてください。これら3台分の人数に当たる人々が、カナダにおける毎月の自殺者の数なのです。300人を超える人々が毎月自殺によって命を絶っているのです。平均すると1日あたり10人の人々が自殺していることになります。

自殺は、カナダにおける社会的・経済的な危機であるといえます。30歳から44歳の人々における死因として自殺は第3位であり、15歳から24歳の人々においては、事故に次いで第2位の死因となっています。こうした人々はまさに人生の最盛期にある人々であり、経済的・社会的発展を遂げる中で、どの国においても非常に重要な役割を担う人々であるといえます。しかし、カナダにおいては2016年、3,926人もの人々が自殺により命を絶っています。これは異常に多い数字であり、その多くが未然に防止できたはずです。そして、命を絶った3,926人それぞれに対して、彼らの家族、友達、同僚など、およそ115人の人々が影響を受けたと推定されており、中には今後の人生でこうした自殺による心理的症状に苦しむ人々もいます。また、こうした身内や知人の自殺により影響を受けた人々自身、自殺を行うリスクが最も高まることがわかっています。これに関する統計を見ると、心が痛みます。2016年だけで、自殺が原因で、約50万人がネガティブな影響を受けることになりました。今後の人生が大きく変わってしまった人々もいたかもしれません。

世界保健機関では、すべての国における自殺防止策としてヘルプラインが重要な柱として位置付けられています。2017年11月には、これに緊急に対応すべくCrisis Services Canada (CSC; カナダ危機対応サービス)によりCanada Suicide Prevention Service (CSPS; カナダ自殺防止サービス)ヘルプラインが設立されました。

ここで必要なソリューションは、解決すべき問題と同じくらい複雑なものでした。CSPSは、心理問題に対応するさまざまなセンターを、自殺防止のための一つのマルチメディア型バーチャルサポートセンターに統合するためのテクノロジープラットフォームを必要とすることになったのです。これには、これらのセンターが地理的に分散している状況および膨大な数の各種組織を統合するにあたって必要となるIT環境の整備などといった問題を乗り越えなければなりませんでした。CSPSはここでGenesys® PureConnect™ソリューションをベースとした「Rogersバーチャルコンタクトセンタープラットフォーム」を使用することで、ヘルプライン業務において一見すると不可能と思えるような課題を乗り越えることに成功しただけでなく、カナダにおける自殺防止の最前線において際立った、素晴らしい成果を収めることができました。

ヘルプライン実装の初期段階における需要に対応するため、CSPSはプラットフォームリリース時において積極的な宣伝活動を行うことはしませんでした。このように控えめなリリースから始まったにも関わらず、リリースから現在に至るまで、20,742もの音声対応ならびに9,051ものメールやチャット経由の対応を行ってきました。

ここで、重要なフィードバックをいただくこともできました。問い合わせをした方々の中には、メールやチャットベースでなければヘルプラインへのコンタクトを行いたくないという人もいました。サポート体制を整えるにあたって、アクセシビリティが非常に重要であるかを示す良い例だといえるでしょう。CSPSが擁する高度な訓練を受けたスタッフたちは奇跡ともいえる数々の結果を生み出してきました。この奇跡を可能にしているのが、アクセシビリティに関するさまざまなニーズに合わせて対応し、なおかつ信頼性を備えた統合型のバーチャルコンタクトセンタープラットフォームなのです。間もなく対応件数が30,000に到達する状況ですが、これまでにCSPSがすでに達成してきた成果には以下のようなものがあります:

 

● 2,917の自殺計画を無事に食い止めることができました。ここで助けを必要としていた人々は、CSPSに連絡してサポートを受けて勇気付けられたことにより安心感を取り戻すことに成功し、その結果自殺計画を進行させないという決断に至りました。
● 645もの効果的な救済策が実行されました。CSPSスタッフはやりとりのエスカレーションを現状以下に抑えるよう努力しており、多くの場合それに成功しています。しかし、時には喫緊の自殺リスクに直面しているヘルプラインユーザーに対して、命を救える可能性があるケースにおいては、直接介入を行う場合があります。645とは、その件数を表しています。
● 80%以上のヘルプラインユーザーが、CSPSに連絡したことにより、自殺願望に対してより上手に対処できるようになったと報告しています。これはつまり、約24,000もの人々が、CSPSに連絡を行なった直接的な結果として、すぐに役立つサポートで、そして命を救う可能性を提供するサポートを得ることができたということを意味します。

 

こうした具体的な成果は喜ばしいものですが、CSPSは自らが持つ優れたポテンシャルをより大きく発揮していけるよう、常に努力を行なっています。また、ここで使用されているコールセンターソリューションは非常に汎用性が高いため、ウェブベースのチャットやFacebook、メッセンジャー、Google+などといったその他のコミュニケーションチャネルにも対応可能となっています。さらに、スタッフがやりとり後に行う後処理時間に関しても、人工知能 (AI) といった最先端テクノロジーの活用によって大幅に減らすことが可能となります。

これによって、臨床・統計データを独自の形で収集できるようになり、カナダで、ヘルスケアの前段階において自殺が及ぼす影響に関する情報としてこれまで把握できていなかった情報について把握することが可能となります。つまり、CSPSによって、自殺に関する発見ならびに、人々やヘルスケアシステムに対して自殺が及ぼす影響についての定性的・定量的データを得ることができます。テクノロジーによって人々が新たな形で繋がりを持てるようになっているのは明白であり、ここには無限の可能性、ポテンシャルが秘められています。

とはいうものの、自殺というのは非常に複雑で、あまり深い理解がなされていない問題です。私たちは、信頼性があり健全なサポートがいつでも利用可能な状態とすることで、命が失われることを未然に防ぐよう努力していく一方、この問題について真剣に多くの人が考えていくことによって、自殺に対して人々が長い間持っている有害な偏見を打ち壊していくことは十分可能であると考えており、これにより、助けを求めている人が躊躇なく必要なサポートを得ることができるようになると強く信じています。カナダで2人に1人が自殺によって命を落とした人の存在を知っているという状況を鑑みると、人々の属性、ライフスタイル、所得水準などに関係なく、自殺というのは文字通りすべての人にとっての問題であるといえるでしょう。

自殺および自殺願望とは非常に繊細な問題であり、助けを求めている人々は並ならぬ勇気と強さを兼ね備えた人々なのです。CSPSでは、カナダに住んでいて助けを必要とするすべての人々が、確実にサポートを受けることができるようにすべく、取り組んでいます。

もしこれを読んでいるあなた、またはあなたの知り合いが自殺願望を抱いているという場合、サポート体制が存在すること、そしてあなたの悩みに応じてくれる人々がいるということを忘れないでください。

 

※ケイト氏が自らインタビューに応じたショートムービーも併せてご覧ください(日本語字幕あり、設定ボタンからSubtitle–>Japaneseで表示されます)

 

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